その後も、番付がぽんぽんっと上がって行ったもんね。貴ノ花が入ってすぐ、俺が三段目のときに対戦したけど勝てなかったよ。すごく足腰が柔らかかった印象だった。
物怖じしない性格も相撲にいい影響があったんだろう。その分、ちょっと非常識なところがあって、だから貴ノ花と輪島さんは気が合ったんだよ(笑)。今思うと大関、横綱までいった人は図太い人が多かったね。
忘れられない最後の秋場所
相撲生活で忘れられないチャレンジはやっぱり、プロレスに転向すると心に決めてから望んだ最後の秋場所だ。この場所で絶対に勝ち越してからプロレスに行こうと決意していた。
というのも、プロレスは、相撲で上手くいかなくて流れ着いた、結果を出せなかった相撲取りの吹き溜まりというイメージがあったんだ。だから俺もそう思われるのが嫌で、絶対に勝ち越そうと気合を入れていたよ。
ジャイアント馬場さんには「負け越してもいいからプロレスに来いよ」と言われていたけど、「俺は勝ち越してからでないと嫌です」という綱引きもあったね。でも、結局、秋場所2日目くらいにサンケイスポーツにプロレスへの転向をすっぱ抜かれたから、負け越してもプロレスに行ってたんだろうけどね。
その秋場所も13日目に勝ち越すことができて、ホッとしたもんだ。これで堂々とプロレスに行けると思った一方で、勝ち越したことで俺もまだまだ捨てたもんじゃないって相撲に未練が出てくるんだよ。
そのときの俺の番付は前頭十三枚目だったけど、真ん中あたりのやつらが揃って負け越していたから、ひと桁台になるのが見えていて「もったいねえぇなぁ」って(笑)。
最後の場所が好成績だったから、プロレスに転向してからも少しは相撲に未練が残るかと思ったんだけど、そうでもないもんだ。