価値観がアップデートされていない
――過剰に擁護する人の中には、被害を訴えている女性を非難する声も見られますが、どう思われますか。
五ノ井さんやカウアン(・オカモト)さんのときから、価値観が全然アップデートされていないと思います。カウアンさんのときは「ジャニーさんが死んでから言うのはどうなのか」といった声がありましたが、今回も「何年も前のことをいまさら……」というような声もあって、事実なら被害者が「セカンドレイプ」に遭っている構図は変わっていません。
――たかまつさんは、事実を明らかにするために記者会見を開くべきだ、と主張されています。しかし、ネット上では「裁判で白黒つければいい」という意見も多く見受けられます。
裁判という制度を妄信しているところが気になります。もちろん、裁判も重要です。しかし、事実を突き止めるためには、マスメディアによる独自取材や、吉本による社内調査や第三者委員会による調査など、さまざまな観点から問題を掘り下げ、事象の解像度を上げていくことが欠かせません。
松本さんは「ワイドナショー」(フジテレビ系)で説明する旨を発信されていましたが、番組の出演者に厳しい質問ができるとは思えません(10日、フジテレビは出演を取りやめることを発表した)。また、これまで吉本との関係性が深い芸能記者も、厳しい質問をぶつけることは難しいと思うんです。だからこそ、テレビや新聞などの忖度する可能性が低い、例えば、社会部の記者が出席できる記者会見を開くべきだと考えています。
裁判をすれば記者会見をしなくてもいい、という風潮が今回の件を機に高まってしまうことの悪影響は大きいと思います。松本さんは影響力が強い人です。たとえ松本さんが主張されているように、性加害をしておらず、事実無根だとしても、どこまでが事実なのか説明したり、声をあげる人を非難する風潮を止めるための呼びかけなどをしたりしてほしいです。一連のXでの茶化すような書き方が、今回の件のみならず、今まで性被害を受けた方のセカンドレイプなどにつながってしまうという意識をもってほしいです。松本さんや吉本の対応が性加害を告発する動きや、「#MeToo運動」など、最近やっと進んできたこうした歩みを後退させてしまうことになるのではないかと危惧しています。