明治としては、球出しの工夫も含めたスクラム対策とともに、もう一つの起点であるラインアウトをミスなく確保することも必須となる。そして、ブレイクダウン(タックル直後のボール争奪局面)での優劣も勝敗を直接左右することになる。帝京は全員の技術が高い。攻撃では自分たちのパワーを良い球出しにつなげるうまさがあり、防御ではうまさと強さで相手の連続攻撃を阻む力がある。明治は京産との準決勝では多彩な攻めで相手のタックラーに的を絞らせず、コンタクトで優位に立ってブレイクダウンを制し、さらに勢いに乗って攻めるという好循環を実現した。天理を後半無得点に封じた帝京の防御相手に再現なるか。

 決勝のキープレーヤーは、明治なら司令塔の伊藤。視野が広く、準決勝では前に勢いをつけながら内側に返したり外に展開したりとタクトを振るった。自ら持って走る能力もあり、準決勝でも2トライ。決勝でも明治がスクラムを確保し、ブレイクダウンで健闘して伊藤が自由に動けるようなら、1年生ながら物怖じしないプレーの海老澤と対抗戦トライ王の安田昴平(3年、御所実)という両WTBやFBの池戸らバックスが生きてくる。一方、帝京の場合、特定のキープレーヤーは挙げられない。準決勝の天理戦で2トライの高本や昨シーズンの対抗戦トライ王の小村、両フランカーの奥井と青木恵斗(3年、桐蔭学園)ら得点力のある選手が多く、なにより、ピッチ上の15人全員が局面局面で正しい判断、正確なプレーで好機を作り出している。

 準決勝後に決勝に向けての準備についてきかれ、「明治に対して1週間近くしっかり準備して、決勝に臨みたいと思います」と答えた帝京キャプテンのフッカー江良颯(4年、大阪桐蔭)。一方、明治の神鳥裕之監督は、決勝の対戦相手が決まる前ということもあったろうが、「軸足は自分たちのラグビーをしっかり遂行できるかという事が肝になってきます」と話した。総合力に勝る帝京が明治のラグビーを抑え込むか、それとも、年を越して成長した明治の勢いが帝京を上回るか――。試合は15時10分にキックオフされる。

[AERA最新号はこちら]