しかし、日本海側での地震は、陸地や陸地に近い海底の断層で起こることが多く、震源も比較的浅いため、津波が起きればすぐに沿岸部に到達することになる。
能登半島周辺でも、半島の北から北東の海底に断層があることが知られていた。今回はこの断層も含めて長さ150キロにわたって陸側に動いたと見られている。沿岸に近い海底が隆起したり沈降したりして発生した津波が、すぐに到達したという。
「私たちのシミュレーションでは、一番早いところで、珠洲市で1分以内に津波の第1波が到達、七尾市(石川県)では2分以内に到達したことがわかりました。津波警報を聞いて、住民らが避難する間もなく津波が到達していたと考えられます」(今村教授)
日本海側でも太平洋側でも津波には警戒
日本海側ではこれまで大きな津波の発生が少ないイメージもあるが、実際はそうではない。
1993年の北海道南西沖地震(M7.8)では、震源に近い北海道・奥尻島に地震発生から数分後に津波が到達。高さは最大で29メートルにもなり、200人以上の死者を出した。
83年に起きた日本海中部地震(M7.7)では、青森県と秋田県の沿岸部に地震から8~9分後には津波が襲来。最大で14メートルの津波にもなり、100人以上の死者を出している。
これら二つの大地震は「日本海東縁部」と呼ばれる北海道沖から新潟県沖にある活断層で起きたと見られている。また、北海道から北陸にかけては海側と陸地にまたがる「海陸断層」や沿岸との境界にある断層が30あまりあると言われている。今回の能登半島地震もこの海陸断層で起きたと見られる。
今村教授はこう指摘する。
「太平洋側のプレート境界型の地震は頻度が高く、研究や自治体での対策も進んできました。一方で、日本海側は活断層型の地震で起こる頻度が低く、よくわかっていないことも多かった。近年の研究で断層の位置や、過去に大きな津波があったことなどがわかってきていますが、自治体ではまだ十分に対策が進んでいない現状があります」
もちろん太平洋側で起きた地震であっても、津波がすぐに襲来する可能性はある。