日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「認知症」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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今年で93歳になる私の祖母は「認知症」です。認知症を患うまでは、食事の買い出しから準備、クリニックへの通院、毎日の掃除など、身の回りのことは全て自分でこなしていた祖母。毎日、家の隅々まで徹底して掃除をするほどのきれい好きであり、身なりには厳しい人でした。
祖母は、年末にはお節料理を、祝いごとの度に赤飯や巻き寿司を作ってくれていました。まさか、そんな祖母の作るおせち料理を食べられなくなる正月がやってくるなんて、私は思ってもいませんでした。妹も両親も、同じ気持ちだったと思います。
大学を卒業し、祖母と両親と住んでいた実家のある大阪を離れ、仕事にがむしゃらになっていた私が、祖母が認知症であることを知ったのは、7年ほど前のことです。
ちょうど、祖父が亡くなってから数年後のことでした。「まさか、あのおばあちゃんが?」と、その話を聞いた時に、耳を疑ったのは言うまでもありません。他人に頼らず自分で全てをこなして生活してきた祖母でしたから、認知症とは最も縁遠い人だと信じて疑っていなかったからです。