さて、世界保健機関(WHO/※1)は2021年時点で、世界の認知症患者は5,500万人を突破しており、毎年1000万人近くの人が新たに認知症を患っていること、そして、年間1兆3,000億ドルの経済損失が生じていることを報告しています。

 また、WHO(※2)によると、これまでの研究で、身体活動をすること、禁煙、有害なアルコールの摂取を避けること、体重を管理すること、健康的な食事を摂ること、健康な血圧やコレステロールや血糖値を維持することによって、認知機能の低下や認知症のリスクを軽減できることがわかっているほか、うつ病、社会的孤立、低学歴、認知能力の低下、 大気汚染(※3)などが、その他の認知症の危険因子として報告されているといいます。

 昨年12月13日(※4)には、カナダのマギル大学のAntonios氏らが、英国の50歳以上の認知症ではなかった約426万人の記録を解析したところ、平均11年の追跡調査後に約

4万人(0.95%)がアルツハイマー病を発症し、ヘリコバクター・ピロリ感染は、感染なしと比較して、アルツハイマー病のリスクを11%増加させたこと、そして、アルツハイマー病のリスクの増加は、ヘリコバクター・ピロリ感染の発症後10年で、24%のピークに達したことが、報告されました。

 加齢はどうすることもできませんが、これらの情報によると、健康的な生活習慣を意識するほか、良好な健康状態を維持するほか、ピロリ菌の除菌など、自分で意識して認知症の予防のために自らアクションを起こせることが多いこともわかります。

 今からでも遅くはないはずです。私も、今一度、自分の生活習慣や健康状態を認識することから始めてみようと思います。

【参照URL】

※1https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2FZ024/ 

※2https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/dementia

※3https://www.bmj.com/content/381/bmj-2022-071620

※4https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.13561

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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