ワクチンや検診が普及すれば子宮頸がんは減少する

 世界保健機関(WHO)は、子宮頸がんの排除に向けた世界的戦略としてワクチン接種と検診を推奨しています。

「イギリスやオーストラリアではワクチン接種がかなり進んでいるため、子宮頸がんも減少しており、オーストラリアでは2028年までに撲滅の基準である年間罹患数が10万人当たり4例未満になると推測されます。イギリスでは2040年には子宮頸がんを撲滅できるとも言われています。一方、日本はだいぶ遅れていて、ワクチンの接種率も検診の受検率もまだ低いのが現状です」(寺尾医師、以下同)

 検診の普及により先進国では子宮頸がんによる死亡率は低下しており、ワクチンや検診により世界全体でも子宮頸がんは減少すると予測されています。しかし日本では、子宮頸がんになる人も、亡くなる人も増加しています。

 子宮頸がんは、早期発見できれば比較的治療しやすいがんといわれており、まずはワクチンによる予防と、検診による早期発見を心がけることが重要なのです。

子宮頸がんの腹腔鏡手術ができる病院は限られる

 子宮頸がんの診断は、子宮頸部をこすって採取した細胞を調べる「細胞診検査」や、拡大鏡を使って子宮頸部を観察する「コルポスコピー組織検査」のほか、MRIやCT、PET-CTなどによる画像検査、血液検査などでおこないます。

 治療は、がんの進行度(病期)やがん細胞の性質、患者の年齢やからだの状態などにより選択されます。手術ができるのはⅠ期とⅡ期で、がんの広がり具合によって切除する範囲が変わります。

 ほかのがんと同様、婦人科のがんでも患者のからだへの負担の少ない手術の普及が進み、腹腔鏡手術も増加しています。ただし、子宮頸がんは、開腹手術と比較して腹腔鏡手術では再発率、生存率が不良というデータがあります。そのため日本では、腹腔鏡手術は4㌢以下のがんに限定され、実施する病院も多くありません。

 また、妊娠・出産を希望する人に対して、子宮を残す手術(妊孕性温存手術)もあります。ただし、早期がんに限られ、一部の病院のみで実施されています。希望する場合には、再発のリスクや治療後の妊娠・出産のリスクなどについても十分に説明を受け、理解しておくことが必要です。

 Ⅰ期・Ⅱ期では手術に代わる根治的な治療として放射線治療が選択されることもあります。子宮頸がんのⅠ期・Ⅱ期では手術と放射線の治療成績は同等とされています。進行がんでは薬物療法と放射線治療の併用療法(同時化学放射線治療)や薬物療法をおこないます。

「子宮頸がんでは、再発した際の薬物療法は抗がん剤だけでしたが、最近では免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬も保険適用になっています」

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子宮体がんは、女性ホルモンとのかかわりが深い