東京オリンピックから採用されたサーフィン競技で、20歳にして銅メダルを獲得した都筑有夢路(22)。アスリートとしての精神を語った。AERA 2024年1月15日号より。
【写真】東京五輪で銅メダルを獲得しガッツポーズをする都筑さんがこちら
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彼女に出会う誰もが、その穏やかな空気感とあどけない声に戸惑うことだろう。この人が五輪のメダリスト、まして海という大自然を相手に戦うアスリートなのだろうか、と。
運に左右される競技
「皆さんに、普段の雰囲気と、試合に向かっていく時と、ギャップがあるって言われます。普段はゆったりしたイメージで、犬とかコアラみたいって。コアラって、意外と獰猛(どうもう)なんですか? だったら私はコアラかもしれませんね(笑)」
そんな風に自分のことを話す。
「小さいころからやんちゃで、木登りが大好き。小学6年生のときに50メートル走を7秒4で走り、神奈川県藤沢市の小学生記録を塗り替えたこともありました。でもサーフィンを始めたのは11歳と遅くて、それまではクラシックバレエを習っていたんです」
トップアスリートを目指すには遅いスタート。胸に刻んでいたのは、母の一言だった。
「小学生の頃、モデルのローラさんが大好きで『ローラみたいになりたい』と言ってたんです。そしたら母が『頑張っている人はそういうオーラが出るんだよ』と。バレエをやめる時も『何か一つ頑張ってみたら』と言われて。兄がサーフィンをしていたので、じゃあ私もサーフィンを一生懸命やってカッコ良い人になろう、と心に決めました」
2歳上の兄とともに練習に明け暮れる毎日。選手としての開花を焦りはしなかった。
「中学から試合に出始めましたが、兄のおまけという感じ。母は『有夢ちゃんが楽しんでやれることが一番。それを応援するよ』と言ってくれて、勝たないと、みたいな感覚を持たないで育ちました。その考え方は、自然相手のスポーツという点では、良かったと思います。やはり良い波が来ないと実力が出せませんし、こんなに運に左右されるスポーツも珍しいと思います」
運に左右される──。そう言った後、でも運任せではない、と続ける。