そして、昨シーズン。広島は阪神に続く2位で4年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出となった。
菊池選手は120試合に出場し、打率2割5分8厘、5本塁打、27打点。1番打者としての出場が多かったが、異例の4番を務めたこともあった。
「チームは開幕から5連敗、私が4番を打つ、途中では10連勝、と驚きが何度もあるシーズンでした。チームも久々にCSに進出して、若い選手はすごくいい経験ができたのでプラスになっているはずです」
守備ではエラーは3、守備率は9割9分5厘という相変わらず驚異的な数字だった。とりわけ印象に残っているのは、8月30日の巨人戦でのプレーだという。
「すごいですね!」と解説者
強い打球が投手前で弾み、センターに抜けそうなところを投手がグラブを出してはじいたことで、打球は一、二塁側に上がって落ちた。
菊池選手は、打者が打った瞬間にセンター方向に動き出し、投手が打球をはじいたときにはすでに数歩駆け出していた。打球方向が変わった瞬間に急きょ逆方向に体を切り返し、猛然とダッシュして一、二塁線上にワンバウンドしたボールを素手でつかみ、一塁に送球し、間一髪でアウトにした。体は本塁方向に突っ込みながらキャッチし、前のめりの状態で体をひねって左側の一塁手に送球している。
動画を確認すると、ボールを投げる瞬間の菊池選手は、体が斜めの状態で宙に浮いているようにも見える。テレビの解説者も「すごいですね! 素晴らしいプレーです」と絶賛していた。
このときのプレーについて菊池選手は、
「投手がボールを弾いた時にどっちに転がるか、ということは常に考えながら守ります。だけど、いつも予想通りになるとは限らない。あの場面も一瞬で、体が自然に反応して動きました。守備では昨シーズンのベストプレーでした」
と振り返った。
一方、打撃で印象に残っているのは、CSでの横浜・DeNAとの初戦。広島が1点を追いかける八回裏、1死三塁の場面だ。赤く染まったマツダスタジアムのスタンドからは、割れんばかりの「菊池コール」。ここでサインはスクイズだった。