「実はプロに入ってからも、自分の打席でスクイズのサインが出たことはあまりないんです。だからプレッシャーもかかりました。けど、自分は普段通りを心がけることに徹しました」
高め外側のボール球を投手前に転がし、見事スクイズを決めた。
「普段通りにやれ、と監督、コーチからは言われます。しかし、CSでは若い選手たちは、打たなきゃと思いながらも、ボールを待ってしまうなど、なかなかできない。経験がまだまだ足りないと思います。DeNAには勝ったけど、阪神戦では1勝もできませんでした。阪神は選手、ベンチそれぞれが、そのときに何をすべきなのか、役割をしっかりと理解し、かつ普段通りに動いていました。その差が出たんじゃないでしょうか」
自身も10年連続で獲得してきたゴールデングラブ賞を、阪神の中野拓夢選手に奪われた。この賞は、プロ野球記者の投票で行われ、それぞれのポジションで1人ずつ選ばれる。今回は中野選手が110票、菊池選手が107票という僅差(きんさ)だった。今回も取って11年連続となれば、セ・リーグでは最多記録だった。
「悔しいですよ。10年間ずっと取ってきたので」
との思いを口にした菊池選手だが、
「昨年の阪神のあの強さ、勢いには完敗です。すごかったです。中野選手は二塁手にコンバートされたばかりで、全試合、全イニングに出場しました。僕は120試合です。記者の投票ですから、やはりそういう点もポイントになったのでしょう。中野選手、おめでとうです」
と中野選手の実力を認め、祝福する。
西川選手の抜けた穴は?
では、今年も阪神の年になるのだろうか。広島は、中軸だった野手の西川龍馬選手がオリックス・バファローズに移籍し、戦力を不安視する声もある。
「みなさんがそこを心配されるのはよくわかります。でも西川がいたポジションは、若手が頑張ってすごい競争をするはずですから、いい刺激が僕らにも生まれます。それに、よく思い出してください。絶対エースだったマエケン(前田健太)がメジャー(ロサンゼルス・ドジャース/現在、デトロイト・タイガース)に移籍した後、広島は3連覇したんですよ。その再来です。日本一になりますから」
菊池選手はそう言い切る。
1月の自主トレがスタートし、今シーズンを見据える。
「正月は初詣にいきゆっくり休めたのですが、元旦から地震が起きたりで驚きました……。僕もチームではベテランになりつつあるので、後輩をひっぱり、監督の気持ちも察しながらやっていきたい」
そして、ゴールデングラブ賞についても、
「今年は奪い返します」
と力強く語った。
(AERA dot.編集部・今西憲之)