放送作家の鈴木おさむさん

 鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、紅白歌合戦について。

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 今回の紅白歌合戦。有吉弘行さん、橋本環奈さん、浜辺美波さんらの司会で注目されてましたが、視聴率が発表されて、歴代で一番低い数字だとかニュースになっています。が、僕は思います。もう、紅白歌合戦は、視聴率なんか気にしないでほしいです。

 今回、改めて拝見させていただき、素晴らしい歌番組だなと思いました。僕が一番、感動したのは「10―FEET」の「第ゼロ感」です。映画「スラムダンク」の映像をふんだんに使い、最後はバスケワールドカップの映像に繋げていく。これが出来るのはNHKならでは。

 映像だけでない。歌唱も演奏も魂がこもりすぎていて、紅白の魔力も加わり、見ていて自然と涙があふれてくる。あれを見られただけでももう満足。

その年に売れた人、売れた曲をブッキング

 他にも沢山ありました。「すとぷり」のパフォーマンスでは「どうなってんの?」という技術を見せつけて、ポケビ&ブラピでは、「やっぱりウッチャンナンチャンってすごいな」と感じさせてくれる。

 水森かおりさんの“ドミノ歌唱”では、正直、歌が入ってこなかったですが、そんなことも含めて紅白。

 70~80代の人からしたら、見たい人がいなかったかもしれませんが、やっぱり紅白歌合戦は、その年、売れた人、売れた歌を中心にブッキングしていくものだ。

 今、テレビ界全体で視聴率というものが難しいものになっている。世帯視聴率もあれば個人視聴率もあって、局により大事にしているデータが違う。時間帯によっては視聴率よりも無料配信動画サービスのTVer(ティーバー)の方が大事なんて時もある。

 僕らテレビマンがそこ(視聴率)に向けて作っていたものが、あってないようなものになってきている。だから言い訳も出来てしまったりするのだが。

 NHKはスポンサーのお金じゃなく作っているから、難しいところなのかもしれないが、70~80代に向けて作るのはある種、出来ることだと思う。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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