今年を代表するアレのひとつ「パインアレ」の誕生秘話をお届けします。パイン株式会社の井守さん(撮影・鮎川哲也)
この記事の写真をすべて見る

 圧倒的な強さで18年ぶりにセ・リーグを制し、日本シリーズでもオリックス・バファローズを下して38年ぶりに日本一に輝いた阪神タイガース。その強さの理由の一つが、岡田彰布監督の戦術にあるのは間違いない。そしてもう一つ、ファンの間でささやかれているのが「パインアメ」の存在である。まさかの展開が重なり、「パインアレ」がヒット商品になるまでの軌跡をたどった。

【写真】パインアメをほおばる岡田監督を激写!

*  *  *

「岡田監督がパインアメを食べていることはSNSでファンの方から情報をいただいていたので知っていました。テレビで、『岡田監督がいつも食べているアメはどれですか? この中で一番お好きなアメはどれですか』というテーマの番組を放送していて、それをたまたま見ていたんです。するとパインアメが一番のお気に入りと言ってくれました。それならすぐにお届けしようと、200粒入った業務用のものを5袋と、当社の製品を詰め合わせて球団にお送りしました」

 そう少し興奮気味に話すのはパイン株式会社(大阪市天王寺区)の広報室長、井守真紀さんである。

 その日からパイン社と井守さんの生活は一変した。岡田監督が公式にパインアメを「好き」と認めたため、さらに売れ行きが上がり、パインアメの人気は爆発的になった。

 パインアメは関西の人には定着していたのでそれなりの需要はあったが、岡田監督によってさらに注目され、それまでアメにあまり関心のない層にまでユーザーが広がったのだ。

「まさかこんなことになるとは思ってもいなかったし、準備もしていなかったので、売れすぎて品薄状態が続き、作っても作っても、足りない状態です」と困惑気味だ。品薄状態を改善するため、10月2週目からは本格的な増産体制に入った。

 井守さんには少し気がかりなことがあった。それはパインアメの差し入れをしてからの阪神タイガースの勝敗だ。試合結果が以前より気になり、差し入れをしてから負け始めた、となるのは避けたかった。そんな心配をよそに、タイガースは快進撃を続けた。あるデータによると、岡田監督がパインアメ好きを公言して以来、勝率は7割を超えた。タイガースの勝利に伴ってパインアメの需要はさらに拡大し、阪神ファンの必須アイテムのようになった。

「ファンの間では勝利のお守りのようになっていったそうです。甲子園球場でパインアメを配ることも、阪神ファンの恒例行事のようになったそうですね」と井守さんはうれしそうに話す。

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選
次のページ
パインアメの知られざる歴史