保護が必要な子どもを一時的に預かる「一時保護所」。私語は禁止、私物は別に保管されて一切持てないなど、厳しく管理されている。こうした環境は、子どもたちにどのような影響を与えるのか。AERA 2024年1月1-8日合併号より。
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東日本に住む50代半ばの女性は、虐待などさまざまな事情で、実親と暮らせない子どもを自分の家庭で養育する「養育里親」になるための研修で、一時保護所を見学した際、目にした光景が今でも忘れられない。
「保護されている子どもたちの中に“大人なんか信用してたまるか”という目をした女の子がいたので、気になって、フランクな感じで声をかけてみたんです。すると、女性職員に『そういうことは、無理にしなくていいですから』と注意されて、本当に驚きました。何げない声かけがなぜ、それほど問題視されるのか。私自身、その後、すっかり萎縮してしまいました」
男子棟で同じ研修に参加していた女性の夫も、子どもを頭ごなしに叱る職員に強烈な違和感を持ち、その訳を尋ねた。
「この子は、物を壊してばかりいるんです。ですから、ここで一般常識をきちんと学ばせないといけないのです」
「まるで刑務所だよ」
違うだろう。問題行動をするには「理由」がある。そこを見るべきだと夫は率直に思った。女性も振り返りの場で、なぜ、声かけがいけないのか、職員に理由を聞いた。すると、「保護されている子と、やり取りをしてはいけない」と、にべもない答えが返ってきた。
一時保護所とは、児童相談所に付設し、虐待通告などを受けて保護が必要となった子どもを一時的に保護する施設だ。女性が垣間見たのは、狭い部屋で大人数で寝起きする生活。基本、私語は禁止。自分の家庭事情を他の子に話すことは厳禁で、常に職員の監視の目が光る。食事中はひたすら黙食。スマホやお気に入りのぬいぐるみなどの私物は別に保管されて一切持てず、学校には通うことができないという、厳しい管理の下で自由を奪われた“日常”だった。
「風呂に入りなさい」「早く寝なさい」と命令されるまま、子どもたちは動く。あてがわれたぬり絵や折り紙を延々とする女の子の姿に、女性は違和感が拭えなかった。
「虐待で心身ともに傷ついている子が多いと聞きましたが、その子たちへのあまりに管理的な対応に、ちょっとこれはと……」