受け継がれる「鉄道魂」
JR根岸駅(横浜市)を出た貨物列車は、上越線などで新潟を経由し、磐越西線で郡山に燃料を運んだ。他にも、新潟から青森など日本海側を経由し、盛岡まで届けた。被災地へのピストン輸送は1カ月近く続き、計5.7万キロリットル、タンクローリー約2850台分の燃料を運んだ。「鉄道が東北を救った」と言われた。JR貨物は当時のことをこう振り返る。
「平常時から災害発生時における緊急輸送への円滑な対応や、物流を途切れさせない為のリダンダンシー(代替輸送)を確保することは、指定公共機関として社会的使命を果たしていく上で重要なことと考えます。それを支えるのは、1873年の貨物鉄道開始以来、鉄道に関わる事業者に脈々と受け継がれる『鉄道魂』だと思っています」(同社総務部広報室)
そして今、再び、鉄道貨物に脚光が集まっている。鉄道による貨物輸送はCO2の排出量がトラック輸送の約11分の1と環境にやさしい。さらに、昨今のトラックのドライバー不足解決の担い手になるとも期待される。
先の小倉さんは「鉄道アーティスト」「鉄道コンテナアドバイザー」を名乗り、鉄道や貨物の役割や魅力をラジオや講演等で伝えている。小倉さんは言う。
「貨物列車は、大容量の荷物を一度に遠くまで運ぶのに欠かせない交通手段です。これからますます必要になってきます。いま鉄路が次々と存続の危機に陥っていますが、鉄路がなくなると、荷物を大量に運ぶ手段が減ってしまいます。時代の変化を読みながら、新しい発想で、貨物のあり方を見直す時でもあると思います」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年12月25日号より抜粋