鉄道ファンに人気なのは人が乗る電車だけではない、大量の物資を一度に運ぶ貨物列車の力強さに魅了される人も。貨物列車愛に溢れる鉄ちゃんが語るその魅力とは。AERA2023年12月25日号より。
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貨物人気は時刻表からも見て取れる。全国を走る貨物列車のダイヤを網羅した「貨物時刻表」が毎年発売され、人気を集めている。もともと公益社団法人「鉄道貨物協会」が1978年、運送事業者向けに発行を始めた。91年から書店などで一般向けにも販売を始めると、鉄道ファンを中心に口コミやネットで人気が広がっていった。
価格は税込み2500円。やや割高だが、毎年2万2千部前後が売れ、鉄道関連では隠れたベストセラーとなっている。
タンク車に胸キュン
同協会調査部の田畑努さんによれば、購入者は年齢・性別に偏りはなく、イベントなどでは家族連れの購入が目立つとか。人気の理由をこう話す。
「貨物列車の写真を撮影する方にとって、撮影計画を立てる時の元になります。巻頭カラー特集も増やして、読み物としても楽しい『貨物列車の総合ガイドブック風』のつくりにしており、初めての方も手に取りやすい点もあると思います」
機関車が牽引するタンク車に萌える人もいる。
「かわいくてかわいくて仕方がありません」
と、目を輝かせて話すのは小倉沙耶(こくらさや)さん(43)。
地元・愛知県の農業高校1年の時、危険物取扱者と毒物劇物取扱者の資格取得を推奨され、様々な物品を運んで街を行き交うタンクローリーが気になった。どんな物質がどのくらいの量、積まれているのか、表示はどうなっているのか……。そうしたことを勉強していくうち、タンクの形状そのものに興味を持った。鉄道旅行好きの母親の影響で、子どもの頃から鉄道が大好きだったというが、高校を卒業する頃には、すっかりタンク車沼にはまった。
イチ推しは、すでに現役を引退した「タキ35000」というガソリン専用のタンク車。今は、わたらせ渓谷鉄道の足尾駅(栃木県日光市)に1両保存されている。タンクの中央部が膨らみ、端に行くほどすぼまる「葉巻型」と呼ばれ、この形状が大好きだという。現役では、10月に量産先行車が完成したばかりの「タキ1300」が推し。セメント専用の小型のタンク車で、白地の車体に紺色の帯が特徴だ。初めて見た時、胸がキュンとした。
「どちらもコロンとしたかわいさ。アイドルを愛でている感じです」(小倉さん)