「ほっぺがピンク色で、眉を下げて泣いて、『フ!』と笑うんです。感情がうかがえて、『かわいい!』って思いました」
20年に新しい「ちいかわ」アカウントで本格的な連載がスタート。数日に一度、1ページ8コマほどの漫画が更新される。営業職の女性は、最新話が投稿されると通知がくるようにスマホを設定し、通知がきたらタップ、そして30秒くらいで読む。ちょっとした待ち時間に、一息つきたいときに、疲れて帰る電車の中で。アニメを見るときも同じ。ちいかわが隙間時間の“お供”になった。
ストーリーは、基本的にちいかわたちの、ほのぼのとした生活だ。ある話では、野原で見つけた巨大なホットケーキを頑張って切って、バターを塗って、ただ食べる。はしっこのサクッとしたところをかじって幸せそう。それで一話が終了だ。
「ほんの一瞬だけでも現実を忘れさせてくれるんです」(営業職の女性)
例えるなら、「赤ちゃんがご飯を食べながらウトウトする動画」を見て、かわいいなと思うのと似た気持ちになるという。ちいかわたちが奮闘したり、仲良くしたりする様子を見て、微笑ましく思って一瞬、癒やされる。
アニメライターの前田久さんは、ショートアニメのヒットの要因をこう分析する。
「短尺なので隙間時間にサッと楽しむことができる点が魅力。重厚長大なエンターテインメントを集中して楽しむ余力がないときでも、気軽に触れられるエンタメです」
頑張る姿に共感
サクッと楽しめるのは、忙しい大人にぴったりだ。だが、注目されているのは、単に短いからだけではない。多くのちいかわファンが、「かわいいだけじゃないんです」と口をそろえる。
ちいかわの世界は、遊んで暮らせるようで、案外深い。働いて、お金を稼がなければならないのだ。草むしりをしたり、シール貼りをしたり、時に泣いて震えながらモンスターを討伐したりする。さらに、賃金アップのための資格取得を目指して夜遅くまで勉強する日も。