岸田文雄首相(中央)と記念撮影する林芳正官房長官(右から2人目)ら新閣僚。岸田首相は「安倍派切り」で局面転換を図るが混乱は必至だ=12月14日、首相官邸
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 自民党派閥の政治資金パーティー券をめぐる問題は急展開を見せている。どのように広がったのか、今後どうなるのか。AERA 2023年12月25日号より。

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 高級ホテルに多くの人々が集う自民党派閥の政治資金集めパーティー。華やかな舞台の裏で、巨額の裏金作りが続けられてきた。とりわけ、安倍晋三元首相が率いてきた最大派閥の安倍派(清和政策研究会)の錬金術に検察のメスが入った。この10年、日本政治を牛耳ってきた安倍派は解体の危機を迎えている。岸田文雄首相は「安倍派切り」で局面転換を図るが、混乱は必至。政権は崩壊寸前だ。そして、この裏金問題は、自民党政治の弔鐘を鳴らしている。

 派閥のパーティー券問題はこう広がった。

 20万円超のパーティー券購入者は、政治資金収支報告書に記載される決まりになっている。だが、一部の政治団体(医師政治連盟、酪農政治連盟など)が20万円超の支出を公表しているのに、派閥側の報告書には記載がない。過去5年分で安倍派の約1900万円を含め、主要5派閥で約4千万円の不記載があるとして、神戸学院大の上脇博之教授が政治資金規正法違反の疑いで東京地検に告発。各派閥は「事務的なミス」として報告書を修正した。

「第二の裏金」

 ところが、疑惑はさらに広がっていく。自民党の各派閥は所属議員にパーティー券を売るノルマを課している。安倍派では各議員がノルマに応じて企業や団体に購入を依頼。その代金は直接、派閥に振り込まれていたが、ノルマとの照合が相次いで事務作業が煩雑になった。そのため数年前から所属議員の口座にいったん振り込ませて、ノルマ分を派閥に振り込む方式に改めたという。ノルマを超える額をピンハネして懐に入れる議員が出てきた。収支報告書には載せない「第一の裏金」である。

 派閥は各議員からの送金を受けてパーティーを開催。ホテルに食事代などを支払うが多額の資金が残る。所属議員に盆暮れの手当を支給するが、それでも残った億単位のカネを派閥幹部らで山分けする。さらに、議員によっては、地元の企業などに多額のパーティー券を購入させ、いったん派閥に納めた後に大半を還流させる方式をとるケースも出てきた。キックバックと呼ばれる「第二の裏金」だ。派閥を事実上のマネーロンダリング(資金洗浄)の機関として利用しているともいえる。

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