
「生物学的年齢」という言葉をご存じでしょうか。アンチエイジングの世界では、「エピジェネティクス」という観点から加齢を評価する研究が進んでおり、DNAの年齢の変化から「生物学的年齢」がわかるといいます。2023年に発表された研究論文では、顔の老化を促進する「加速因子」と、それを防ぐ「保護因子」が発見されたそうです。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。
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私たちの肌は、年齢だけでなく、生活の歴史そのものを映し出します。例えば同じ年齢の人でも、肌の老化の程度は大きく異なります。それは、紫外線曝露(ばくろ)量、たばこ、生活習慣などさまざまな原因によります。肌の老化は、ただ単にしわやシミが増えることではありません。皮膚の構造や機能が変化し、その結果、外見上の特徴が変わってくるのです。しかし、これが一様に進むわけではなく、個人差が大きいのが特徴です。

実年齢とは別に、「エピジェネティクス」という観点から加齢を評価する動きがアンチエイジングの世界では進んでいます。エピジェネティクスとは、DNAの配列は変わらずに、DNAの周辺の機能が変わることで、遺伝子の発現制御が変化する生命現象のことを指します。少し専門的な話になりますが、エピジェネティクスの中核をなす現象にDNAメチル化というものがあります。DNAにメチル基が付加されることによって、遺伝子の活動が調節されます。このメチル化のパターンは、年齢とともに変化し、私たちの生物学的年齢を示すバイオマーカーとして機能します。
DNAのメチル化に関して、2023年に発表された面白い研究があったので紹介します。ニューヨークの研究グループは、遺伝情報と健康情報がある大規模なデータベースを利用し、顔の老化に影響を与える可能性のあるメチル化の位置を特定しました(文献1)。そして、これらのメチル化が単なる老化の目印ではなく、老化を進行させる可能性があることを明らかにしました。この研究の面白いところは、顔の老化を促進する「加速因子」と、それを防ぐ「保護因子」となるメチル化マーカーの発見です。これらはそれぞれ、肌の老化を早める要因となるものや、肌を保護し、若々しさを保つ役割を果たすものです。