本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)
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 友人Aからいろんなラインを送られてきて、そのたびに辛い気持ちのまま返信を書いたり、3人で会った時も友人Aは私を「負け犬」と思っているんだなあ、それを友人Bが私に言ったんだなあと感じる時の苦しさの総量。

 一方、すっぱりと関係を切ることで、2人からのラインが来なくなり、誘いもなくなる苦しさの総量。

「距離を置こうと思った事もありますが、そうなると本当にひとりぼっちで寂しい」と書かれていますから、赤福さんは、関係を切る方の苦しさの総量が多いと結論したのでしょうね。

 その結論は、赤福さんが選んだことですから尊重したいのですが、そうなると、申し訳ないのですが、赤福さんが「平穏な気持ちで友人関係を続けられる」アイデアが、僕には考えられないのです。

 3人だけのグループラインに毎週のように盛りだくさんの写真を送ってくる友人Aは、とても自慢したいんだと思います。それは、どんな気持ちなんでしょう。本当の友達なら、「赤福さんは、こういう写真をラインには上げない。私だけたくさん上げたら、嫌な気持ちになるんじゃないかなあ」と思うと、僕は考えます。

 そんな気遣いよりも友人Aには、写真を上げたい理由があるんじゃないでしょうか。「本当に楽しかった」ことより「自慢したい」という気持ちが強いんじゃないかと思うのです。他人に「自慢したい」ということは、「今の自分を大きく見せたい」ということではないかと僕は考えます。それは、つまり、「今の自分は大きくない」ということを分かっているか、内心、怯えているからじゃないかと思っているのです。

 実際、僕が会ってきた本当に素敵な人は、むやみに自慢しません。人から言われることがあっても、自分から自慢を口にしません。満足しているから、その必要がないからです。不安な人や自信がない人、中途半端な人が自慢を続けます。そうして自分を必死で維持します。そのためには、自慢できる他人が絶対に必要なのです。

 赤福さん。ですから、友人Aは、僕からすると、自分に自信がなかったり、生活に不安があったりする人なんじゃないかと勝手に思ってます。

 そういう人は、自慢を続けます。やめると、自分が自分でなくなるような気がしてしまうからです。

 ですから、赤福さん。これからもラインの写真はたくさん送られてくるでしょうし、自慢も続くと思います。

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