今年9月にNHKを退職し、サンミュージックへ移籍したアナウンサーの武内陶子さん(58)。【前編】ではNHK退職の理由や、同期で大学の後輩の有働由美子さん(54)とのエピソードなどを聞いた。【中編】では、精神的な苦痛で一度は諦めた不妊治療について、高齢出産になるにもかかわらず第2子、第3子をつくろうと思ったきっかけなどを語ってもらった。
※【前編】<武内陶子さんが語るNHKの同期・有働由美子アナとの関係 新人時代に「うちら体力採用やんな」>から続く
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武内さんには、3人の娘がいる。全員、不妊治療の末、授かった命だ。1994年に文化人類学者の上田紀行さんと結婚。それから10年がたち、やっと第1子を妊娠した。出産は武内さんが39歳のときだった。
「10年近く子どもができなかったので、私はこのままでもいいかなと思っていたんです。夫と二人でも十分楽しかったですし。でも、夫は欲しいと言うんですね。彼は文化人類学者なのですが、子どもは無の状態で生まれてくるのに、どうして心ができるのか、そういうことにすごく興味があるって。それに、物差しが夫婦の時間の経過しかなくなっていくのも、少しさびしい気がしていました。たとえば、結婚何年目とか。それで、子どもっていう新しい物差しが私たち家族の中にできるのもいいねって二人で話してたんです」
しかし、いざ子づくりを始めると、働く女性の出産時期の“壁”にぶち当たったという。
「97年から『おはよう日本』を担当していたのですが、そのときは忙しすぎて……。妊娠のタイミングを見計らってたんですが、そんなの無理だと気づきました」