NHK時代の武内さん(写真=本人提供)

視聴者から受けた「理不尽なクレーム」

 そこで武内さんが考えた言葉が、「今日もいい一日をお過ごしください」だった。

「一日の始まり、私たちとご一緒してくださってありがとう。そんな皆さんにいい一日を過ごしてほしいっていうのは、心から言えると思ったんです。その後は、自分がすべての人に心から言える言葉を探すようになりました」

 苦情には理不尽なものもあったという。その一つが「目の下のクマが気になって仕方ない」というクレームだ。

「目の下のクマを見てると気分が悪い、チャンネル変えたくなるとか、そういうのも来てたんです。『それはオタクのテレビの画面のせいかも……?』とか思いつつ(笑)、どうしようかなと思いましたね」

 冗談も交えて明るく話す武内さんだが、こういったクレームには傷つかなかったのだろうか。

「もちろん傷つきましたよ。全国放送では見られている人の数も多いので、ダメージも大きいんですよね。多くの人がそう思ってるような気になるし、みんなが私のこと嫌いなんじゃないかって思うし」

 しかし、“クマ事件”以降、前向きにとらえるようになったのだという。

「クマのときは、お化粧でどうにかならないかなって思って、顔を真っ白に塗ったり、目の周りにコンシーラーを使ったりしたんです。美白の女王、鈴木その子さんばりに(笑)。そうするとまた手紙が来たんです。『今朝の武内さんは本当にお顔が白く輝くようで、なんと明るい朝だったでしょうか』と(笑)。これは極端にしても、私の一つの行動で気分が明るくなる人がいるんだって思うと、うれしかったですね。なので、そういった経験をしてからは、苦情とかお叱りの手紙とかいただくと、もう逆に、『おっしゃ!』って思うくらいになって、少し楽になりました」

「おはよう日本」のほかにも、武内さんが担当した番組は数多い。2003年には紅白歌合戦の総合司会も務めるなど、NHKの看板アナウンサーとして活躍し続けた。退職時の役職はエグゼクティブアナウンサー。アナウンサー職での最高位にあたり、局長級の役職だ。そのまま残るという選択肢もあったはずだが、なぜ転職をしたのだろうか。

「4年前から携わっているラジオ番組の影響が大きいですね」

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アナウンサーでは「手に負えない」