※画像はイメージです。本文とは関係ありません(francescoch / iStock / Getty Images Plus)
この記事の写真をすべて見る

 人類に大きな変革をおこした発明の源には、常に「数式」があります。

 欧米企業の特にリーダー層は、たとえ自身は数学が苦手であっても、現場の人たちに数学的な説明を求め、数式から理解しようとする姿勢があります。一方、日本では、文系と理系のようにはっきり住み分けてしまいがちで、自分の担当ビジネスに人工知能・機械学習・データサイエンスがどう活かせるか発想するための理系的リテラシーを持つ文系リーダー層が少ないという課題があります。これでは、新しいビジネスチャンスを逃してしまいます。

 大手金融機関でクオンツ(金融工学や統計学などの数式を駆使して金融市場の分析や予測を行う専門家)、データサイエンティストとして働く冨島佑允さんは、それは非常にもったいないことだと話します。著書『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』から、冨島さんが考える数式の魅力や、なぜ数式を「読む」能力が必要なのか、その理由を、一部抜粋・改変して紹介します。

*  *  *
「数式読解力をつけて創造的な人になる」。私が数式の本を執筆した最大の理由は、数学が苦手でも数式がいかに美しくおもしろいものかを、読者のみなさんに伝えたかったという、とても純粋な理由です。が、数式の美しさやおもしろさに触れながら、“数式読解力”を身につけてもらえたら、というのがもう一つの大きな理由でした。

“数式読解力”は私の造語で、数式を通じて物事の本質を見抜く力のことを指します。

 創造性は、本質を見抜く力から生まれます。本質とは、物事を動かしている隠れた法則のことです。

 たとえば、ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授は、年収と幸福度の関係を調べ、年収が800万円を超えると、そこからは年収が上がっても幸福度はあまり増えないことを発見しました。こうした隠れた法則を見つけたことで、お金さえあれば幸せになれるという世の中の常識が変わっていきました。

 このように、見たり聞いたりできるものの裏にある法則を発見できれば、そこから思いもよらぬ発想が生まれ、新しい何かが創造されていくのです。

次のページ