プロ野球もオフシーズンとなり、11月10日にゴールデングラブ賞、28日にベストナイン、MVP、最優秀新人の受賞者が発表された。これらは記者投票によって行われるため、その投票結果が物議を醸すことも少なくない。今年、成績やセイバーメトリクスの指標が高かったにもかかわらず、評価の低かった選手を探ってみたいと思う。
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まずセ・リーグのゴールデングラブ賞では10年連続で受賞していた菊池涼介(広島)を抑えて中野拓夢(阪神)が初受賞を果たして話題となった。守備率では菊池が上だったものの、補殺数などは中野が大きく上回っており、この選出は全く不思議ではない。また守備範囲の広さやセイバーメトリクスの指標でこの2人を上回る吉川尚輝(巨人)を推す声も多く、得票数では3位につけている。
セ・リーグのセカンドの名手と言えば確かにこの3人だが、もう1人守備での貢献が大きかったセカンドが牧秀悟(DeNA)だ。出場イニング数は中野に次ぐ数字を記録しており、守備率もほぼ同じ数字をマーク。また守備全般での貢献度を示すUZRでは中野、菊池を大きく上回る数字となっているのだ。打撃のイメージが強くなっているが、大学の下級生時代まではショートを守っており、グラブさばき、ハンドリング、スローイング、全てにおいて高いレベルにあることは間違いない。体格もあって軽快さや派手なプレーがない点が強く印象に残らないことから得票数は多くないが、来年以降も打撃だけでなく守備にもぜひ注目してもらいたい選手である。
同じゴールデングラブ賞でパ・リーグのサードでは宗佑磨(オリックス)が3年連続の受賞となり、得票率も圧倒的だったが、あらゆる指標を見てみるとそこまで飛び抜けているわけではない。UZRでは栗原陵矢(ソフトバンク)が高い数字をマークしており、また総合的に見てもっと評価されても良いのが安田尚憲(ロッテ)ではないだろうか。
パ・リーグのサードでは宗に次ぐイニング数をプレーしており、守備率は宗を上回っている。特に悪送球による失策数1というのは、規定守備イニングに到達した三塁手の中で両リーグを通じて最少の数字であり、送球の安定感は見事という他ない。宗は打球への反応スピードや難しい体勢からのスローイングなど印象に残るプレーが多いため、得票数で差がつくのは致し方ない部分はあるものの、現実的な守備力は安田が決して劣っているということはないはずだ。ドラフト1位で同じサードの上田希由翔(明治大)が加入し、来年は苦しい立場となるが、その安定した守備は大きな武器であることは間違いないだろう。