続いてベストナインだが、投手の東克樹(DeNA)、山本由伸(オリックス)の2人は今年の成績を見れば妥当という印象を受けるが、セ・リーグでもっと評価されても良いという活躍を見せたのが戸郷翔征(巨人)だ。投球回数は九里亜蓮(広島)、東に次ぐリーグ3位の170回を記録。セイバーメトリクスで総合的に選手を評価するWARではこの2人を上回っている。後半戦に弱いというイメージが強かったが、今年は1年を通じて安定した投球を見せ、4完投というのも東と並んでセ・リーグトップタイの数字である。チームがBクラスに低迷したということもあるが、それでもさすがに得票数0というのは評価が低いように感じられる。来季はさらに成績を伸ばして、タイトル争いに加わる活躍を見せてくれることを期待したい。

 最後に評価されていないわけではないが、珍しい現象でベストナイン、ゴールデングラブ賞のどちらも逃したのが岡本和真(巨人)だ。今年は両リーグダントツ1位の41本塁打を放ち、3度目のホームラン王を獲得している。しかしファーストのレギュラーが不在だったということと、シーズン終盤には坂本勇人がサードを守る機会が増えたこともあって、岡本の先発出場試合数はサードが82試合、ファーストが52試合、レフトが6試合で分散。そのことでゴールデングラブ賞もベストナインもサードとファーストで票が分かれ、結果としてどちらも受賞することができなかったのだ。自身の問題ではないが、非常にアンラッキーな出来事と言えるだろう。

 ゴールデングラブ賞、ベストナインというのは一度受賞すれば後々まで名前が残る名誉ある賞である。だからこそ、現在のような無記名による記者投票ではなく、最低でも記名式にして、その投票理由も明らかにするなど、選手にとってもファンにとっても納得のいくものになることを望みたい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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