ホストクラブの看板が立ち並ぶ歌舞伎町の一角。画像を加工しています(撮影/上田耕司)

マニュアルには「鎖をかける」「地雷を置く」

 一般的なホストクラブでは、月末、ホストの売上額順にランキングの発表があり、ベスト10に入ることを「ナンバー」と呼ぶ。ナンバーにも入れず、下位グループになるとテーブルの拭き掃除やトイレ掃除などをやらされる。必然的に、ホストたちは「ナンバー1プレーヤーになりたいから、応援してくれ」と女性客たちに頼み込む。「一緒にナンバー1の景色を見よう」などと口説くことで、女の子に「自分は特別な存在なんだ」と思わせていく。

 塩村氏が確認したホストクラブのマニュアルには「鎖をかける」「地雷を置く」など、女性客を縛りつけるテクニックが書かれていたという。

「ホストが、自分の客にストレートに『他店へ行くな』とは言えないんだそうです。だから客をマインドコントロールする。ホストが『ずっと僕だけを見てくれているからうれしい』などとささやき、暗に、他店へ行くと自分は嫌われることになる『地雷』だと理解させ、自然と他店に行かせないようにするわけです」

 こうしてマインドコントロールされた女性たちは、売春をしてでもホストの売り上げに貢献しなければと思わされてしまう。ホストにとって最も売上に貢献してくれる女性客を「エース」と呼ぶが、自分がホストから頼りにされる「エース」だと思った女性は体を張ってでも貢ぐことになる。その結果、前述したように街頭で「立ちんぼ」をするなどして売春し、ホストクラブの売掛金(ツケ)を必死に返済しようとする。

「なかには『出稼ぎ』といって、地方の風俗店まで泊まり込みで出張して、お金をためてから東京に戻って来て、またホストに使う子もいます。『出稼ぎ』をしている女性に何人もお会いして話を聞きましたが、海外売春まで斡旋された女性もいます。ホストが直接、女性客に伝えると法律に抵触するので、スカウトやエージェントを介して指示を出すという卑劣な方法をとっています。今、アメリカやオーストラリアは売春目的での入国が厳しくなっているので、中国、香港、東南アジア、ドバイなどに行っているようです。海外売春をすすめられた女性からエージェントの指示も見せてもらいました。『入国審査の時には全部、携帯でのホストとの連絡は消しておけ』という指示もありました。海外でカンジタや性病にかかった時のために『膣錠を持って行け』とも指示書にありました」

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男性が行く「キャバクラ」とは違う理由