こうした状況を見て、私が思い出すのは、麻生太郎政権末期の様子だ。2008年12月頃から翌年春にかけて、麻生不人気は極限に達し、支持率13.4%、不支持率76.6%(共同)にまで下落した。今でも印象に残っているのは、こんな冗談だ。

「ある小学校で女性教師が授業中に先生に隠れて漫画を読んでいた男の子に注意した。〇〇ちゃんだめよ。漫画ばかり読んでると麻生総理大臣みたいになっちゃうわよ」と。

 一国の首相がここまで馬鹿にされるのは異例だ。

 こうなると、麻生氏の言動全ては悪く解釈され、支持率回復は不可能。衆議院議員の任期満了ギリギリまで解散もできず、最後にやぶれかぶれの解散総選挙を行ったが、民主党に大敗し、自民党は政権を失った。

 岸田氏が、増税メガネ、さらには増税クソメガネというあだ名をつけられて馬鹿にされる状況はこれに酷似している。

 だが、実は、違うことが二つある。

 一つは、麻生氏が衆議院任期まであと1年で政権に就いたのに対し、岸田首相の場合は、衆議院の任期まであと2年近くあるため、その間は首相が解散しない限り選挙の審判を受けなくてよいこと。

 もう一つは、麻生氏の時は、民主党が破竹の勢いで支持を拡大中で選挙をすれば自民党大敗が確実な状況だったが、今の野党には政権交代する勢いは全くないということだ。

 そこで、首相としてはこの二つの違いを利用した戦略が可能になる。

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岸田首相が描く二つの「延命策」