「当院からこれまで多くの患者さんを紹介している地域では、クリニックの情報はだいたい把握しています。地方の患者さんで、情報が少ない場合はその地域の訪問看護ステーションや緩和ケア病棟、地域包括支援センターなどに問い合わせ、患者さんに合う医師を探すようにしています」(前出・上田さん)
入院中に患者が急変し、「今日か明日に帰したい」場合、受け入れ先がすぐに見つからないこともある。地域連携室看護師の佐藤友貴絵さんはこう話す。
「その場合でもあきらめずに、探し続けます。ギリギリ間に合って帰ることのできた患者さん、ご家族から、『自宅に戻れて本当によかった』といわれたときの言葉が、モチベーションになっています」
退院前には病院で在宅医と顔合わせをする
在宅医が決まったら「退院前カンファレンス」がおこなわれる。主な目的は患者が退院後に受ける医療やサービスについて、関係者が確認をし合うことだ。患者と家族、病院の主治医や病棟の看護師、地域連携室のスタッフ、ここに在宅医や看護師らが参加する。患者が介護サービスを使う場合、ケアマネジャーなどが参加することもある。家族が遠方にいる場合、オンラインで参加できる病院も増えている。
新宿ヒロクリニック院長の英裕雄医師は、「すでに診療情報提供書は拝見していますが、実際にお会いし、お話しすることで在宅医療のよりよいスタートをきれるのです」と言う。
2つ目、3つ目のケースについては、後編で紹介します。
(取材・文/狩生聖子)
※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2024年版 在宅医療ガイド』より