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がんの終末期で積極的な治療ができなくなると、病院から退院を促される。自宅に帰りたい場合、どのように手続きをするのか、治療を拒否した患者が最期を自宅で過ごす方法はあるのか、専門家に取材した。好評発売中の週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2024年版 在宅医療ガイド』から、前編・後編の2回に分けてお届けする。

【図解】がん終末期患者の3つの選択肢はこちら 寝たきり状態でがん病院から在宅へ

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 がんの再発や転移で積極的治療ができなくなった場合、急性期病院での入院を続けることは制度上、難しいため、退院を促される。

住み慣れた家で最期を迎えたい人が増加

 近年は退院先として、「自宅での在宅医療」を選ぶ人が増えている。がん治療が専門の急性期病院、がん研有明病院(トータルケアセンター地域連携室)によれば、2022年度に地域連携室に新規面談の依頼があったのは入院・外来患者あわせて1720件。このうち、約73%を自宅での訪問診療(在宅医療)につないだ(情報提供のみのケースも含む)。

 一方、通院がまだ可能でありながら、積極的治療をやめる人もいる。在宅医療をおこなう新宿ヒロクリニック院長の英裕雄医師によれば、こうした患者の多くが自宅で訪問診療を利用している。

「緩和ケア外来のある病院やクリニックに通院し、通えなくなったら在宅医療に移行。希望に応じて自宅でお看取りというケースです。また、中には『がんの治療は一切、受けない』という人もいますが、このような場合も、希望すれば在宅医療を利用できることを知っておいてほしいですね」(英医師)

 次からは、がん患者が自宅で在宅医療を受けることのできる三つのケースについて、具体的な仕組みと流れを解説する。

【1】寝たきり状態で入院中 もう積極的治療はできない

 終末期で急性期病院に入院中の場合、退院後の療養先は主に、「他の病院の緩和ケア病棟」「自宅」「施設(がん末期対応可能な施設)」の三つになる。

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どれを選ぶかは簡単には決められないことが多い