「あの試合がなかったら今の活躍はないでしょうね。神がかっていたと思います。デビュー戦でそういう体験をしたので、もちろんハードルも上がりましたが、自分にもっと期待したくなりました。あの時を超えるような経験もしましたし、さらに上を体感したいです」

~カメラを通じての見え方と長さ(=尺)を重視する

『ソープオペラ』と形容されるWWEは細部に至るまで徹底的な計算がなされている。選手入場に関しては会社側の意向が大きく影響力を持つと思われる。

「会社側(WWE)にも考えはあるでしょうが自分がアイディアを出して交渉すべき部分だと思います。選手入場は自分のキャラを表現する場所。『こんなキャラなのでこういう入場がしたい』という思いは伝えた。もちろん選手によっては会社の指定通りに振る舞う場合もあります」

「WWEは世界中へ向けて発信しています。10億人と言われるファン(視聴者)の多くは画面を通じて見るのでカメラは意識します。どういう形、角度から撮って欲しいのかを伝える。逆にカメラ側からも『こういう感じが良いんじゃないか?』」と意見を出されることもあります」

 WWEにとってライブと共にテレビや配信での放送が重要。カメラアングル等と同時に入場時間の長さ(=)尺も考えないといけない。

「生放送で自分の時間も決まっている。与えられた条件下で最大限の表現をすることを意識しています。会場へ行って花道の長さなどは必ず確認します。例えばスタジアムクラスは花道が長いから、お客さんを飽きさせずにコミュニケーションを取る方法を考えます」

「アドリブというか、ノープランや感覚だけで入場する時もあります。またテレビ中継がない試合もある。様々な会場を経験してライブ感を養っていくのがプロレスラーの成長過程。各所の空気を肌で感じて表現方法を変えたりします」

 中邑真輔というレスラーをどう魅せて感じてもらえるかが重要。「後楽園ホールのようなお客さんをかき分けて入っていく会場も同じ。花道がなくても自分を表現する方法を考えます」と強調する。

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