司法制度改革で法曹養成を目的に設置された法科大学院(ロースクール)。修了すると弁護士・裁判官・検察官になることを前提にスタートしたが、司法試験の受験回数には制限があり(2014年までは3回、現在は5回)、合格できずに他の仕事に就く人もいる。
大江恵さんもそんな一人だ。一橋大学法科大学院を修了後、司法試験に挑戦したが夢かなわず、最終的に国家公務員のいわゆるキャリア組として法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)に就職。現在は難民に関わる各種の企画・立案、調整に携わっている。そんな大江さんは「法科大学院に進学してよかった」と語る。法科大学院で得たものはなにか。それは今の仕事にどのように生かされているかを聞いた。
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国家公務員の説明会でどのような仕事かを知る
大江恵さんは大学の法学部を卒業後、法律について深く学びたいという思いで、一橋大学法科大学院に進学した。
「法学部は大教室で講義を聴いて試験を受けて……という一方通行の授業が多く、学ぶことも法律に限らず幅広かったので、大学院で法律についてしっかり学んで成長したいと考えました。そして弁護士をめざしていたので司法試験の合格率が高い一橋大学法科大学院を選びました」
司法試験は、受験資格を得るまでのハードルも高く、国家試験の中でも最難関とされる。大江さんは法科大学院を修了後、司法試験を受験した。しかし、残念ながら思うような結果が出ずに、どうしようかと迷っていたとき、親しい友人が「国家公務員に向いているのでは」とアドバイスしてくれたという。それまで公務員に関心があったわけではなかったが、アドバイスがきっかけとなり、インターネットで調べて様々な省庁の業務説明会に参加した。