国家公務員として仕事をしていく上で、一橋大学法科大学院のソクラテスメソッドの授業が生きていると大江さんは話す。ソクラテスメソッドは、教授が質問して学生が答え、さらに対話を繰り返すことで自分の考えを伝えながら学びを深めていく問答法だ。

「大勢の学生がいるなかで自分の意見を述べないといけないので、最初は教授に当てられるのが怖くて(笑)。でも結果として、自分の意見を人前で堂々と話す訓練になりました。施策の企画・立案をするときも、上司や同僚、関係者など、相手が誰であっても、何人いたとしても、しっかり話し合い、意見をきちんと出さなければなりません。発言するのが怖いと思っていたら、それこそ国益が損なわれることになりますから」

出入国在留管理庁 大江恵さん

よりよい難民認定制度のための施策の企画・立案、調整、運用をおこなう

 大江さんが最初に配属されたのは品川の東京入国管理局。中・長期で滞在する外国人に在留カードを発行するような現場作業や、在留資格の審査にも関わった。それから霞が関の法務省入国管理局で庶務や国会関係の仕事を経験して、東京入管に戻ると不法滞在者の摘発を担当した。1年後にはまた霞が関の本省に戻って民事局で国籍に関わる仕事をし、それから大臣官房国際課で法務大臣など政務三役の表敬訪問や海外出張の際の調整・対応を担当した後、産休および育休に入った。育休中には、夫の留学に帯同し米国で入管法を勉強し、成績優秀者協会に選出された。

 帰国後、仕事に復帰してからは入管庁の難民認定室に配属。

「難民認定室は、難民関係の業務を所掌しています。私が22年9月に同室に配属されたときは、ちょうど入管法を改正しようとしているタイミングでした。それでなくても難民が世間の注目を集めていて、心して取り組まなければと身が引き締まる思いでした。私は難民認定申請の審査業務には直接関わっていませんが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や外国の入管当局とやりとりをしながら、各種施策の企画・立案や調整、施策の運用によって難民認定制度をよりよくするという仕事をしています。また国際会議などが開催された際には、日本の難民認定についてどう発信するかも考えます」

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