こうして日本が転落する一方、特に12年の第2次安倍晋三政権のアベノミクスで株高が進んで以降、富裕層が増えていった。一般に、借金を引いて1億円以上の金融資産を持つ世帯を「富裕層」と呼ぶ。野村総合研究所によれば、2021年に富裕層は148万5千世帯となり、同研究所が推計を始めた05年以降で最も多くなった。
そんな富裕層の象徴と言われるのが、タワーマンションだ。
JR大阪駅北側の再開発エリアに、「グラングリーン大阪 ザ ノースレジデンス」という名のタワマンが建設されている。
「1部屋25億円」が人気
地上46階建て、高さ約173メートル、総戸数は484戸。「次代の王宮」をイメージした高級な内装や設備が売りで、販売価格は1億円前後から。最上階の1部屋は25億円と、関西の分譲マンションとしては最高額だ。
今年10月にモデルルームが報道陣に公開されたが、25億円の部屋は、2LDKで広さ305平方メートル。天然石を一面に敷き詰めた玄関ホールを挟み、天井の高さ約5メートルのリビング・ダイニングがあり、まるで超高級ホテル。売り主の幹事社である積水ハウスによれば、反響は大きくモデルルームの見学予約は連日満席だとか。
「関西圏の富裕層を中心に多数のエントリーを頂戴(ちょうだい)しております」(同社)
先の森永さんは言う。
「富裕層の多くは株式や不動産の譲渡益で儲け、自分で働いて稼いだ人はほとんどいません。お金にお金を稼がせ、とてつもなくお金持ちになる人が爆発的に増え、格差が拡大しています」
政治の面から見ると、この30年はどんな時代だったのだろうか。政治学者で東京大学名誉教授の御厨貴さんは「政治が劣化していった30年」と評する。
「きっかけは1990年代の政治改革で、衆議院に中選挙区制から小選挙区比例代表制が導入されたことにあると思います」
未公開株が多数の政治家にバラまかれた88年のリクルート事件後の政治不信を受け、旧来型の自民党の派閥政治から脱却し、政党が政策で争って政権交代が実現しやすい仕組みにしようという名目の下に94年、小選挙区比例代表並立制を導入する政治改革4法が成立した。