コロナ禍以降、食料配布の列に並ぶ女性や若者が増えている。「勝ち組と負け組の格差が深まっている」(TENOHASI事務局長の清野さん 撮影/横関一浩)
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 バブル崩壊から30年──。格差は広がり、国際競争力は過去最低になった。この30年で失ったものは何か、脱出するには何が必要か。AERA 2023年11月27日号より。

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 日本の凋落を端的に表しているのが国際競争力の低下だ。スイスに拠点を置く国際経営開発研究所が、「経済状況・経済パフォーマンス」「政府の効率性」などから「企業がビジネスでどれだけ競争力を発揮しやすい環境が整っているか」を調査し、順位付けして毎年発表する。

 主要約60カ国の中で、日本の国際競争力は、89年からの4年間、日本はトップだったが、山一証券や北海道拓殖銀行が経営破綻した97年には17位に急落。以来、1桁台に返り咲くことはなく、今年は35位に沈み、とうとう過去最低となった。

「転落の30年でした」

AERA 2023年11月27日号より

 経済アナリストで獨協大学の森永卓郎教授は、失われた30年をそう例える。背景には、「マクロ面では財務省の緊縮財政、ミクロ面では構造改革があった」と言う。

「1980年ごろ、財務省(当時の大蔵省)は『財政再建元年』というキャッチフレーズを掲げ、増税路線に舵を切ります。それ以降、緊縮財政の嵐が吹き荒れ、増税路線が続いています」

AERA 2023年11月27日号より

「富裕層」は過去最高に

 森永さんに言わせると、日本は約1300兆円の借金があるが、約1100兆円の資産を持ち、「世界で最も健全な財政状況を持つ国の一つ」。しかし、財務省は、日本は世界最大の借金を抱え財政破綻が国民生活の破綻をもたらすという恐怖心から、消費税率を上げ続けていったという。

「そのため消費が落ち、消費が落ちれば、企業の売り上げも減り、日本の経済は転落していきました」(森永さん)

 ミクロ面での構造改革とは、2001年に発足した小泉純一郎政権が推し進めた政策だ。中でも「不良債権処理」というお題目で、「黒字で何の問題もない企業を二束三文でハゲタカ外資に売り飛ばしていったことが日本を貧しくさせていった」と、森永さん。

「日本の世界に対するGDP(国内総生産)のシェアは落ち込み、日本の企業が日本のものではなくなり、おのずと日本の経済は失速していきました」

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