宝塚歌劇団で25歳の劇団員が自死したことをめぐり、劇団側は11月14日に第三者委による調査報告書について発表した。遺族側が訴えていた上級生からのハラスメントについては「確認できなかった」とした。遺族側の弁護士は、「上級生が下級生を叱責するという劇団の慣行を無批判に的に受け入れている」として、「被害者も加害者もいないという劇団側の見解を追認するもの」と厳しく批判した。
「故人に対するいじめやハラスメントは確認できなかったとされており……」
劇団の木場健之理事長は記者会見でそう述べた。
謝罪はしたが……
劇団員が亡くなる直前の1カ月で118時間以上におよぶ時間外労働が自死の背景にあったと認め、「劇団員の健康配慮をするべきだったのにできていなかった」として謝罪はしたが、遺族側が主張している複数の上級生によるハラスメント行為については認めなかった。
遺族側は、上級生からヘアアイロンを押し当てられてやけどを負わせられたとし、上級生から稽古中にパワハラを受けていた、などと主張していた。
同日、東京で会見を開いた遺族代理員の川人博弁護士は、調査委の報告書に対し、
「パワハラの存否に関する報告書の事実認定と評価は失当(不当)」
「被災者の母親が委員会のヒアリングの際に具体的に供述した内容を引用せず、無視している」
などと指摘した。
どういった供述、事実が無視されたのか。
ヘアアイロンやけど 看護師「劇団内では日常的」
上級生がヘアアイロンを押し当て、やけどを負わせたとする問題について、調査委の報告書は、劇団診療所の看護師の証言を引用し、
「痕には残らない程度のやけどと思われた」
「ヘアアイロンでやけどをすることは劇団内では日常的にあること」
などとして、上級生が故意にやけどを負わせたという見方をしていない。
一方、川人弁護士によると、劇団員の母親は、
「皮膚が赤くなって3センチも皮膚がめくりあがっている状態だった」
などと証言しているといい、やけどを負った翌日に撮った写真を見ても、
「化粧をしてもわかるほどひどい傷だった」
などと話したという。