キンタロー。さんと工藤勇一さん[撮影・大野洋介(キンタロー。さん)、本人提供(工藤さん)]

 社会に変化が訪れている現在、未来を生きる子どもたちに必要な教育とは何か。学校改革を進める横浜創英中学・高校校長の工藤勇一さんとキンタロー。さんが語り合った。AERA 2023年11月20日号より。

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キンタロー。:学校教育でひとつ気になっているのは、一斉授業の進度がすごく緩やかだということです。一番遅い子に合わせてるからなんですが、その結果、優秀な子が手持ち無沙汰になってしまい、やる気を失ってしまうことがあると聞きました。学級崩壊につながることもあるそうです。海外の飛び級制度のように、できる子はどんどん先に進むことができれば、モチベーションが高まると思うんです。もっと、子どもたちひとりひとりに合わせた教育が自由にできればいいのにな、と。

工藤勇一(以下、工藤):まさにその通りです。勉強で一番大事なのは、子どもが主体的に何をどうやって学ぶかを決めることです。でも日本では全て決められていて、ひどい先生は「線は定規で引きなさい」「シャーペンはダメで鉛筆。濃さは2B以上」とか学び方まで指示している。そうすると、子どもの脳はイライラします。

キンタロー。:はい。そして最後は無気力になると思います。中学生の頃、そんな経験があります。ルールばかりが敷き詰められていて、苦しくなって。

工藤:日本の学校教育は欧米に比べて、とても未熟で幼いのかもしれません。子どもの主体性を伸ばしていくことが教員のスキルとして言語化されていませんから。

 いま校長を務めている横浜創英中学・高校(横浜市)では、生徒それぞれに応じた学びを選択できる取り組みを始めています。英語では中1から中3まで学年を壊して、教科書通りに進むクラス、ヒアリング・スピーキングに特化したクラス、AI教材やアプリを使うクラスなど、学び方や学ぶ場所を選べるようにしています。

キンタロー。:それはすごいですね!!

工藤:一斉授業のクラスも自分で選択しているから、生徒はすごく集中していますね。先生側も塾の名物講師のように専門的なことができるし、やりがいがあります。25年4月からは全教科で個別最適化を目指し、学年を超えた授業をスタートする予定です。音楽や美術、体育もです。国が定めたルールに従ってやる必要があるので、すごく難解なパズルでしたが、だいたい解けました。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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