今シーズンは大丈夫だが
全国の土鍋のトップシェアを誇る「銀峯陶器」の代表取締役で、萬古陶磁器工業協同組合の理事長を務める熊本哲弥さんは、今後の見通しをこう語る。
「四日市の業界としては、来年の半年分くらいのペタライトを確保できています。ただ、それが切れてしまうと、本当になくなってしまう」
今後、土鍋の価格は上がってしまうのか。
「弊社製品の卸値は、昨年と比べて少し値上げさせていただいています。最後に購入したペタライトは、それまでの倍ほどの値段でした。土鍋を焼く燃料費もかなり値上がりしています。今後の卸値については、どこを落としどころにするか、ですね」
一方、県の窯業研究所でもペタライトの量を減らしたり、代替原材料を用いたりと研究を進めており、実用化に向けたテスト中だ。同研究所の林課長によると、基礎的な研究はほぼ終えているという。
「ただ、われわれが数キロ単位の材料で実験しているのに対して、実際の現場ではトン単位にスケールアップされます。すると、材料が変わることによって、製造工程を見直す必要が出てくるなど、細かなハードルがたくさんあります」
林課長は続ける。
「実験すればするほど感じるのは、土鍋の原材料としてのペタライトのすばらしさです。値段はさておき、なんとかペタライトの輸出を再開していただき、ペタライトの土鍋を作り続けられるのが一番いいと思っています」
鍋料理ファンとして、この声が中国企業に届くことを願っている。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)