足元を見るような値段

 50年以上前からビキタ社と取引を行ってきたこの商社は、単にペタライトを輸入するだけでなく、現地へも足を運び、日本の土鍋用に高品質のペタライト粉末が生産できるようアドバイスしてきた。

「日本の窯業メーカーに安心して使ってもらえるような安定した品質になるまで、何十年もかかりました。その矢先にこんな事態になってしまって」

 と、悔しさをにじませる。
 

土鍋を作る土には約4割のペタライトの粉末が含まれている=銀峯陶器提供

 ペタライトは土鍋業界の生命線なので、この商社ではかなりの量の在庫を維持してきた。

「輸入が止まってからも1年以上、在庫を保ってきました。でも、さすがにもう倉庫はすっからかんですよ」

 すると、EVバッテリー生産用にペタライトを買いつけた中国の業者から連絡があった。

「いわゆる横流しです。それも人の足元を見るように、従来ビキタ社から購入していた価格の5~10倍もする。そんな値段で卸しても製品価格に転嫁できないですよ」
 

 このままでは土鍋産業がつぶれてしまうと、この1年間、ビキタ社に対して日本向けの輸出を再開するよう「拝み倒してきた」という。そしてビキタ社からは、

「来年には日本向けにペタライトを出せるように努力する」

 と回答があったという。

 しかし、先行きは不透明だ。

「期待はしていますが、今後どうなるかはわかりません。おそらく、輸出が再開されたとしても『リチウム鉱石』としての価格で取引され、これまでの値段で入手できないでしょう」
 

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