まず、政権を取り巻く環境は年末以降、さらに悪くなるという判断がある。年末の来年度予算案の編成では、防衛増税の方向性を示すことになるほか、少子化対策の財源3.5兆円についても社会保険料の引き上げや医療費の削減方針などを固めなければならない。増税・負担増のオンパレードだ。2024年1月からの通常国会では、野党が増税批判を強めるほか、閣僚の不祥事などが表面化する可能性もある。
経済情勢も不安材料だ。アベノミクスの金融緩和が続き、日本はマイナス金利のままだ。欧米との金利差による円安が日本の物価高を招いている。日本の物価高を抑えるために日銀が金利引き上げに転じれば、景気は減速必至だ。
一方で、岸田首相が無理筋の経済対策を進めて政権浮揚を図り、解散のタイミングを狙うことには、別な事情もあるという見方が自民党内でささやかれている。ベテラン議員が語る。
「来年にかけて、自民党の政治とカネをめぐるスキャンダルが出るのではないか。解散・総選挙が遅れれば自民党へのダメージは深刻で、場合によっては政権を失いかねない。岸田氏はその事情を知っているから早めの解散を模索している。ただ口外できないので、その事情には触れず、経済対策で政権を浮揚して総選挙に臨もうとしている」
「減税」への批判を浴び続けて失速していくか、解散で一気に局面転換に出るか。岸田首相がどちらを選択しても政権崩壊につながりそうな政局である。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2023年11月13日号より抜粋