本拠地を関西に置く阪神とオリックスが激突した今回の日本シリーズ。熱戦が連日繰り広げられているなか、両指揮官の采配が冴えわたっている。
1勝2敗で迎えた第4戦目。試合の流れを変えたのは、岡田彰布監督のサプライズ起用だった。同点の8回2死一、三塁で、中川圭太を打席に迎えたところで、審判に投手交代を告げる。試合の分岐点を託した男は、湯浅京己だった。
球場がどよめきに包まれる。無理もない。湯浅は4カ月半も1軍のマウンドから遠ざかっていた。6月15日以来のオリックス戦(甲子園)の登板を最後に、不調でファーム降格を告げられて調整していたが、左脇腹筋挫傷に見舞われてシーズン中に復帰できなかった。
リハビリを終え、2日前まで宮崎のフェニックス・リーグに参加していたが、日本シリーズ第4戦で初のベンチ入り。強力救援陣の中で故障明けの右腕は起用の優先順位が低いと見られたが、岡田監督は勝負所で投入した。湯浅はその期待に見事応える。中川への初球に低めの149キロ直球を投げ込み、力ない打球は二飛に。右こぶしを握り締めてガッツポーズすると、甲子園は耳をつんざくような大音量の「湯浅コール」に包まれた。
この継投策が試合の分水嶺になった。オリックスに勝ち越しを許さず、9回1死満塁から4番・大山悠輔の左前適時打でサヨナラ勝ち。対戦成績を2勝2敗のタイに戻した。