先入観にとらわれず、良いと思った選手をすぐに抜擢するのも大きな特色だ。育成契約で入団した宇田川優希は7月下旬に支配下登録されると、勝負の夏場にセットアッパーで起用。今年は3月のWBCで侍ジャパンの一員として世界一に貢献し、シーズンでも4勝2セーブ20ホールド、防御率1.77の好成績を残した。同じく育成出身の東も8月以降に先発ローテーションに定着し、6勝0敗、防御率2.06をマーク。日本シリーズ第3戦で先発に抜擢され、5回5安打1失点の粘投で球団初となる育成出身日本シリーズ初勝利を飾った。
また、昨年まで1軍登板なしの高卒3年目・山下舜平大を開幕投手に抜擢。8月下旬に腰痛で離脱したが、9勝3敗、防御率1.61と期待以上のパフォーマンスを見せた。
中嶋監督はメディアの前で多くを語らないことでも知られる。口下手な部分があるかもしれない。「記者泣かせ」とも揶揄されるが、選手たちの前では知られざる素顔を見せているという。
スポーツ紙記者はこう語る。
「『男気があって優しい』と選手たちは口をそろえて言います。ミスをして落ち込んだ選手には『思い切りやったプレーだから仕方ない』『次に切り替えよう』とすぐに声を掛ける。洞察力に長けているんですよね。選手たちの様子に常に目を配り、時にはユーモアのあるいじりで笑わせたりする。監督ですが、選手の良き兄貴分のような一面もあり慕われている。チームの結束力は固いし、しばらくは黄金時代が続くのではないでしょうか」
阪神、オリックスは共に強力投手陣が武器でロースコアを勝ち抜く野球ができる。1つのプレー、1つの采配が勝負の流れを変える繊細な攻防が繰り広げられる中、日本一に輝くチームは――。
(今川秀悟)