岡田監督は試合後のインタビューで、湯浅起用の場面をこう振り返っている。
「(首脳陣は)誰も湯浅と言わなかったけど、湯浅は6月以来ですかね。ぶっつけ本番で湯浅にかけるしかない。湯浅にかけるとファンの人の声援でガラッとムードが変わると思いました」
スポーツ紙デスクはうなる。
「あの場面で湯浅をつぎ込むのは正直バクチに近い。でも岡田監督は冷静だった。シーズン中からファームの試合を常にチェックして、フェニックス・リーグの試合も確認していた。湯浅なら抑えられるという確信があったのでしょう。感心させられたのは、湯浅を起用することで阪神ファンが盛り上がり、試合の流れを変えられると判断したことです。今までこのような発想で采配を振るった監督は聞いたことがない。どんな状況でも冷静に俯瞰し、時には球場の雰囲気も味方につけて瞬時に最善の手を打つ。まさに勝負師です」
今季15年ぶりに復帰した岡田監督に向けられた期待の声は大きかった。だが、不安の声がないわけではなかった。矢野燿大前監督と対照的に、選手たちと積極的にコミュニケーションを取るタイプではない。時にはメディアを通して辛辣な言葉を発する時もある。ナインと溝ができないか――。だが、その懸念は取り越し苦労に終わった。