「今」を大事にする。今のこの風の心地よさ、今のこのソファの座り心地、今のこの自分の手の形、今のこの鳥の声、などなど、今自分がいいなぁと思うことをたくさん見つけていけば、こういうしあわせこそが、深く本来の自分とつながるしあわせで、それが定着していけば、新しい自分になる気がする。
松本さんはインドがお好きで、インドに行かれてそこでMBAもとられた。インドでは、ガンジス川で沐浴(もくよく)している人もいれば、となりで火葬しているところもあるという、生き死にが、隠されず隣り合わせに、ただそこにある様子を目の当たりにしながら、それを日常として暮らしていらっしゃったことを考えると、「今」を大事にすることにも、長(た)けていらっしゃるのかなとも思う。
インドでMBAをとり、再び日本に戻られてからは、経営をお寺の住職さんたちに、なんと宗派を超えて教えられているという。やはりまた、道のないところに道をつくる人。
企業にも入っていき、産業医ならぬ、産業僧として、仏教という教えをベースにして働く人の相談に乗る。これも誰もやっていないこと。
松本さんの作ってくれた道でみんなが、ハッピーになっていく。そういう意味では、東大受験が松本さんの誰もやっていない道を作る最初のステップだったとしたら、悪くない。
※AERA 2023年11月6日号