坂野井和代さん。研究室のパソコンの前で

――当時はたくさん取材を受けたんでしょうね。

 ものすごい数の取材を受けました。もう嫌だなと思うぐらい。でも、最初に隊長に面談に行ったときに言われたんですよ。「ハッキリ言ってあなたは見世物パンダだよ。でも、それもあなたの仕事だと思いなさい」って。それで割と吹っ切れて、嫌だなと思いつつも取材を受けた。

 そうすると「日本人初の女性越冬隊員として」とか「女性の視点で」とか聞かれるわけですよ。でも、「女性の視点で」って言われてもねえ。「私の視点で」なら語れるけど。私はたぶん、普通の平均的な女性からかなりずれているんですよ。

――どんなふうに?

 たとえば、女の子だけで集まってワイワイやるとか、一緒におトイレ行くとか、そういう感じじゃないんです。かわいいものがすごく好きというわけでもない。だから、よりによってそういう私に聞くか、みたいなことを正直、言いたかったんですけど、言うわけにもいかず……(笑)。

 小学校くらいから、男の子と遊ぶほうが楽しかったですね。昼休みは男の子とキックベースしてました。中学校のころには、自分は男でも女でもない、ニュートラルだと思っていました。それも特別なものじゃなくて、どっちでもないから、どっちでもいいや、みたいな。どっちの平均値にも近くないなというのは自分ですごく感じていました。でも根が楽天的だから、まあこれでいいやって自分で納得しちゃう(笑)。

今しか一緒にいられないかも

――ニュートラルなまま結婚へ?

 好きになるのは男性だったので、別に問題なく(笑)。

――大学4年で結婚って、早いですよね。

 私が研究室に入ったら、夫は博士課程2年で、研究室のサーバー(コンピューター)の管理をしていたんです。私はもともとコンピューターに関心があったし、南極に行くにはできるだけスキルを身につけておいたほうがいいだろうという思いもあって、彼に習いにいった。一緒にサーバー管理をしていると2人でいることが多くなって、そのうち研究室で噂になって……。

――お目にかかってわかったんですが、和代さんは背が高いですよね。彼も高いんですか?

 いやいや、夫は私より低いんです。私は167センチで、いまだに家族の中で一番背が高い。大学生の長男にもまだ抜かれていません(笑)。夫は背が低いことをちょっと気にしていたみたいですが、私は出会ったときからまったく気にしていなかった。

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南極でとったデータを2年半かけ博士論文に