駒澤大学総合教育研究部教授の坂野井和代さん
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 駒澤大学総合教育研究部教授の坂野井和代さんは、東北大学大学院博士課程1年のときに女性初の南極観測越冬隊員になり、昭和基地でオーロラの光学観測を担った。同じ分野の研究をしていた4歳年上の健さんと結婚したのは大学4年のとき。東北大に就職した健さんと東京で就職した和代さんは、社会通念を自在にぶち破りながら男児2人の子育てと仕事を両立させてきた。

 駒大の教員になって18年、主にIT系の授業を担当し、今年9月まではデジタル改革教育担当の学長補佐も務めた。「私は研究者というより教育者だと思っていますが、基本的に自分の能力を生かせているので楽しい」。南極で越冬したことも、そこで得たデータを解析して博士号を取ったことも、仕事に全部役立っているという。「人生って偶然の連続だなって思います」(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

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――1997年11月に東京を出航し、99年3月に帰国した第39次南極越冬隊に参加されました。中学生のころから南極に行きたいと思っていたとか。

 南極の本を読んで、「南極に行ってみたいな」と思ったんですよ。「海外旅行に行きたい」というのと同じようなノリで、南極の珍しい自然をまるごと体験してみたいって。高校に入ってすぐ(1987年)に女性が初めて夏隊に参加するという新聞記事が出た。それで、もしかして私も、と思うようになり、東北大の理学部に行くと南極に行けるらしいと聞いて1浪して東北大に入り、地球物理学を専攻したら初めて「南極に行った」と言う先輩と出会った。「噂はホントだったんだ」と思いました(笑)。

オーロラを観測するには

 1年おきに大学院生が南極に行く研究室に4年生で入り、研究テーマはオーロラを選んだ。南極の夏は空が暗くなりません。オーロラ観測するには越冬するしかないんです。

 越冬隊員に決まった当時、「途中で挫折しなかったんですか」ってよく聞かれたんですけど、本人としてはそこまで思い詰めていたわけじゃないというのが正直なところで、なるべく近づけるように進路選択していたら、たまたまうまくいって行き着いたっていう感じなんです。

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「女性の視点で」って言われても…