写真集『奇界遺産』『世界』やTV番組「クレイジージャーニー」で知られる写真家・佐藤健寿さん。これまで世界120カ国以上をめぐり、「人間の<余計なもの>を作り出す想像力や好奇心が生み出したもの」をはじめ、さまざまな奇妙な光景や文化を撮影してきました。最新作『CARGO CULT(カーゴ・カルト)』は、南洋に伝わる不思議な信仰に迫った希有な写真集。刊行を控えた写真家・佐藤健寿さんに話を聞きました。
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人類学の世界で知られる謎に満ちた信仰の真相とは
――まず、「カーゴ・カルト」という信仰はどのようなものなのでしょうか。
カーゴ・カルトは直訳すればカーゴ、つまり「物資」とか「積み荷」に対する熱狂的信仰という意味なんですが、もともと人類学の世界では20世紀初頭からメラネシアの各地で起きた不思議な信仰とか集団ヒステリーの一種だと言われていました。実際に今回現地を撮影してみたら、必ずしもそういうことでもなかったんですが、不思議な信仰であることには間違いがありません。
――佐藤さんらしいテーマですね。興味をもった理由を教えてください。
きっかけは昔、諸星大二郎先生の漫画『マッドメン』で知ったのが最初ですね。パプア・ニューギニアの部族が飛行機を神様みたいに崇拝しているシーンがあるんですが、その時はただのフィクションだと思っていて。その後で2015年に初めてバヌアツのタンナ島を訪れたんですが、現地の人から「カーゴ・カルトを続けている村がある」という話を聞いたんです。調べてみると、毎年2月にジャングルの中で現地の人々が米軍兵の格好をしてパレードをしているということでした。
ずっと行きたかったんですが、まずタンナ島自体のアクセスが悪い上、お祭りが行われる時期がサイクロンのシーズンに重なるので、日程の調整が難しくてなかなか行けなかったんです。コロナもあったりして。それが今年ちょうどいろんなタイミングがぴったりあって、念願かなって行くことができました。