野手では“伊勢の怪物”の異名をとる村田怜音(皇学館大→西武6位)が超大型スラッガーで評判となっているが、一方で攻守にバランスの良いタイプとして挙げたいのがヤクルト5位の伊藤琉偉(新潟アルビレックスBC)だ。高校時代(東農大二)は県内では名前の知られた存在で、東京農業大でも早くからリーグ戦に出場。しかし昨年秋のリーグ戦後に退学し、一時は野球から離れていたものの、素材の良さが買われて新潟に入団。夏場以降に大きく成績を伸ばし、わずか1年の在籍でNPB入りを勝ち取った。

 身のこなしが軽く、正確なスローイングも備えたショートの守備は大きな魅力。BCリーグ選抜チームではセカンドも難なくこなせるところを見せた。打撃もまだ細身ながらスムーズな振り出しで広角に鋭い打球を放つ。今年で21歳とまだまだ若く、山田哲人の後釜候補として期待したい好素材である。

 他にも大化けが期待できる選手は多いが、逆に下位指名ながら1年目から一軍の戦力になりそうな選手も存在している。特にその可能性が高そうなのが古田島成龍(日本通運→オリックス6位)と糸川亮太(ENEOS→西武7位)の2人だ。古田島は取手松陽、中央学院大でもエースとして活躍し、4年秋には明治神宮大会でも優勝。社会人でも層の厚い投手陣の中で早くから主戦となり、今年の都市対抗でも2試合で先発を任されている。回転数の多い140キロ台後半のストレートは勢いがあり、カーブ、チェンジアップで緩急をつけられるのも特長だ。

 一方の糸川は万能タイプの右腕。ENEOSではリリーフでの登板が多かったが、昨年の日本選手権では日本新薬を相手に6回を被安打1、8奪三振で無失点という快投を見せた。ストレートは140キロ台中盤程度だが、シンカーは鋭く大きく変化する“特殊球”と言われる独特のボールで、打者が全く対応できない空振りを喫するシーンも多い。制球も安定しており、三振を奪えるのも魅力だ。1年目からブルペン陣の一角に入ることも期待できるだろう。

 今年大きくブレイクした村上頌樹(阪神)も入団時は5位指名であり、また松山晋也(中日)や茶野篤政(オリックス)も育成ルーキーながら1年目から貴重な戦力となった。来年以降もここで挙げた以外の選手も含めて下位、育成から驚きの飛躍を見せる選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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