西尾典文
今月26日に行われたプロ野球ドラフト会議。1位指名では7度の抽選があり、4年ぶりとなる有観客での開催とあって、大変な盛り上がりを見せた。注目度が高く、報道も多いのは当然1位指名の選手だが、下位や育成での指名でもその後に驚きの成長を遂げる選手は少なくない。そんな大化け候補としてはどんな選手がいるのだろうか。
まず投手では広島育成1位の杉田健（日大国際関係学部）が面白い。高校時代は無名の存在で、大学進学後も故障もあって3年秋まではリーグ戦で1試合も登板していない。今年の春にようやくリーグ戦デビューを果たすと、秋はエースとなりチームの優勝に大きく貢献した。細身だが長いリーチを柔らかく使える腕の振りは素晴らしいものがあり、145キロを超えるストレートは角度も勢いも申し分ない。
縦のスライダー、横に鋭く滑るカットボールもレベルが高く、故障があったとはいえ昨年まで全く実績がなかったのが不思議な選手である。逆に言えば下級生の頃から活躍していれば、もっと高い順位で指名されていた可能性も高いだろう。素材の良さでは豊作と言われた今年の大学生投手の中でも上位という印象で、体が大きくなれば驚くようなボールを投げるようになる可能性も高い。
投手でもう1人名前を挙げたいのが西武が育成5位で指名した木瀬翔太（北嵯峨）だ。1年夏から公式戦で登板するなどチーム内では早くから投手陣の一角に定着したものの、チームが上位まで勝ち進んだことはなく、全国的に名の知られた投手ではない。この夏も初登板となった3回戦の日星戦は10奪三振、1失点で完投勝利をおさめたが、ベンチスタートとなった続く立命館戦ではリリーフで登板したもののチームはコールド負けで敗退している。
それでも長身で悪い癖のないバランスの良いフォームは一昨年のドラフト1位である小園健太（DeNA）とイメージが重なり、指にかかった時の140キロ台のボールは勢いがある。また決め球のフォークもブレーキは抜群で、空振りを奪える必殺のボールだ。日星戦にもプロのスカウトだけでなく、関西の強豪大学の関係者も多く視察に訪れており、熱心に勧誘したそうだが、最終的にはプロ入りを選んだ。西武は二軍も楽しみな若手が多いだけに、切磋琢磨してさらなるレベルアップを目指してもらいたい。
西尾典文
西尾典文／1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所（PABBlab）」でも毎日記事を配信中。
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