じつは、子宮の傾き方は人によって個人差があって、おなか側に倒れている人もいるし、背中側に倒れている人もいます。腟は子宮に向かってやわらかくのびているので、タンポンを入れる方向がその向きに合っていなければ、当然ながら痛いし入らないわけです。痛い思いをした人が、再びタンポンにトライするかといったら、そこまでがんばってみようという人は多くないだろうと推測されますよね。

 とすると、経血の量が多いとか、仕事の都合でナプキンを替えるタイミングが難しいなど、やはり必要に迫られてタンポンを使い始めた方が多いのかもしれません。

 タンポンの使い方でよくある間違いは、タンポンを連続で使用することです。一日の中で一度タンポンを使い、替えどきになったところで、それを抜いたら次はナプキンを使うというように、タンポンを連続して使わないのが望ましい使い方です。連続使用によってトキシックショック症候群(TSS黄色ブドウ球菌によって引き起こされる急性疾患のこと。初期症状には高熱を伴った発疹、倦怠感、嘔吐などがある)が起こるのを防ぐためです。

 こんなトラブルもありうるので、使っている方には一度使い方を見直してみていただきたいですが、正しく使っている分には、タンポンはまったく怖いものではありません。

月経カップはこんなふうに使う(図版:朝日新聞メディアプロダクション)

 最近話題になっている月経カップについては、タンポンが使いにくい方は、さらに使いにくいだろうと思います。月経カップは、折りたたんだカップを腟の中に広げて、経血を受け止める生理用品です。使い捨てではなく、繰り返し使用できるのがメリットですが、ベルのかたちになっているカップを折りたたんで、太い側を先端として腟に入れていくので、タンポンのようにスムーズなガイドがついていても入りづらいという方には、月経カップを入れるのはさらにハードルが高いかもしれません。

 生理用品の選択肢が増えるのは、とても良いことだと思います。それぞれのメリットに目を向けて、ご自分の生活に合わせて、好みに合ったものを選んでいただければ良いでしょう。

(構成/長瀬千雅、ブックデザイン/鈴木千佳子)
 

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高尾美穂

高尾美穂

医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本医師会認定産業医。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。婦人科の診療を通して、さまざまな世代の女性の健康をサポートし、ライフステージに沿った治療法を提案。その過程で、患者の悩みや困りごと、さらには娘の心身についての悩みの相談を聞くことも。テレビや雑誌などメディアへの出演、連載、SNSでの発信のほか、アプリstand.fmで、再生回数1100 万回を超える人気音声番組『高尾美穂からのリアルボイス』を毎日配信中。とくに、更年期の専門家として、女性たちの支持は非常に高い。著書は『いちばん親切な更年期の教科書─閉経完全マニュアル』(世界文化社)、『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)、『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)、『オトナ女子をラクにする心とからだの本』『人生たいていのことはどうにかなる─あなたをご機嫌にする78 の言葉』(以上、扶桑社)など多数。

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