疑われ、責められる被害者
「民事裁判に出れば、傷つく。これは、被害者が口をそろえて言うことです」
そう話すのは、あいの会代表の小沢樹里さん(42)。裁判のなかで主張や証拠を信じてもらえず、疑われ、責められ、追いつめられる被害者の姿を、数えきれないほど見てきた。車同士の追突事故で後遺症を負ったある男性は、「保険会社が俺を加害者のように扱う」と言い残し、自殺したという。
実際、小沢さんの家族も、損保の対応に苦しんだ過去を持つ。
08年、小沢さんの義理の両親・弟・妹の4人が乗った車に、飲酒運転による暴走車が追突した。義父と義母は亡くなり、義弟は瀕死(ひんし)の重傷、義妹は顔面を粉砕骨折した。当時大学生だった義弟と義妹は一命をとりとめたものの、脳の認知障害である「高次脳機能障害」が後遺症として残ってしまった。
事故の後、加害者側の損保担当者との面会の場が設けられ、小沢さんと義妹が出席した。すると担当者は、「高次脳機能障害って言うけどさ、ここがこれなんだよ」と、頭を指さして“クルクルパー”のジェスチャーをしたという。
「要するに、『頭がおかしくなっただけで障害ではない、賠償は認められない』という主張です。あまりにひどい言葉に、妹は真っ青になってぼうぜんとしていました」と、小沢さん。その夜、義妹は「こんな世の中で生きてられない」と泣き崩れたそうだ。