「私たちは再び生身に還る  AIでは得られないやるせなくも愛おしい“命の共感”」小島慶子

　タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ！」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

＊　　＊　　＊

　お茶のCMに登場する女性が実はAIが作った非実在の人物だった！と話題です。白髪交じりの溌剌（はつらつ）とした女性（未来の姿）が、みずみずしく元気な若い女性（現在の姿）に変化します。確かに、生身の人間を特殊メイクやデジタル加工で加齢させたり若返らせたりすることはできても手間がかかるし、抵抗を示すタレントもいるでしょう。

　すでにニュースにはAI音声による読み上げが導入されており、遠からずAIキャスターもお馴染みになるはず。これまで人がやっていたいろいろな仕事がAIにとってかわられる流れは不可避と言えます。アメリカで俳優組合が声を上げているように、俳優の容姿や声が勝手にAIの学習材料にされています。権利を守るために、公正なルール作りが不可欠です。